アトピー性皮膚炎
「かゆくて夜も眠れない」「季節の変わり目やストレスで悪化する」「薬をやめるとまたぶり返す」
それは、アトピー性皮膚炎の可能性があります。
慢性的にかゆみを伴う湿疹が繰り返し出る皮膚の病気で、赤ちゃんから大人まで幅広い年代にみられます。
見た目だけでなく、生活の質(QOL)にも大きく影響する疾患のひとつです。
症状
症状は、慢性的な湿疹とかゆみが中心です。
- かゆみの強い赤みやブツブツ、ジュクジュクした皮疹
- 掻くことで皮膚が厚くなり、黒ずんだりゴワゴワする
- 首、肘、膝の裏、顔、背中などに出やすい
- 夜間にかゆみが強くなり、睡眠の妨げになることも
- 気温・湿度の変化、ストレス、ホコリや花粉などで悪化
症状が出たりおさまったりを長期間繰り返すのが特徴で、「治ったと思ってもまた悪くなる」を繰り返します。
原因
さまざまな要因が複雑に絡み合って発症します。
代表的なものには以下があります。
体質的な要因
- 皮膚のバリア機能の低下
- 家族にアトピーや喘息、花粉症などアレルギー体質の方がいる
環境・生活習慣の要因
- ホコリ、ダニ、花粉、ペットの毛などのアレルゲン
- ストレス、寝不足、発汗などの生活環境
- 石けんやシャンプーの刺激
- 季節の変化(乾燥、寒暖差)
原因のすべてを取り除くことは難しいため、炎症を抑える治療とスキンケアを継続していくことが大切です。
治療法
当院では、症状の重さや年齢、生活スタイルに合わせて以下のような治療を組み合わせています。
掲載している治療法・お薬は一般的な例です。
実際の診断や治療方針、使用するお薬は、診察のうえ医師が患者さまごとに判断し、ご提案いたします。
内服療法
抗ヒスタミン剤
痒みに対して最もよく使われる飲み薬です。
ヒスタミンを抑えることによって、痒みなどのアレルギー症状を抑制します。
シクロスポリン
免疫抑制剤に分類される飲み薬です。
炎症を起こす体内の物質の働きを抑える特徴があり、塗り薬や抗ヒスタミン剤を使用しても改善しなかった痒みにも効果が期待できます。
他の治療で十分な効果が得られない症状が重い方が対象となります。
経口JAK阻害薬
炎症の信号を伝える物質(JAK)の働きを抑える飲み薬です。
JAKは炎症を引き起こすシグナル伝達に重要な役割を果たしており、それを阻害することによって炎症や痒みを抑制します。
服用開始早期から痒みや湿疹といった自覚症状の改善が期待できます。
外用療法でコントロールが難しい中等症から重症の方への適用があります。
ただし、安全に使用するためには定期的な血液検査、感染症検査、胸部X線検査などの厳格な全身管理が必要となります。
当院では現在、経口JAK阻害薬による治療はお取り扱いしておりません。
外用療法(塗り薬)
- ステロイド外用薬:炎症を抑える主力の治療薬
- タクロリムス軟膏:非ステロイドで顔などに使用される
- 保湿剤(ヘパリン類似物質、ワセリンなど):皮膚のバリア機能を補強
▶️ 塗り薬の正しい使い方を丁寧にご説明し、症状が改善した後もリバウンドを防ぐための塗布計画を立てます。
保湿外用剤
皮膚バリア機能と保湿因子が低下しているため、様々な刺激による皮膚の痒みを生じやすく、種々のアレルゲンが侵入しやすくなっています。
保湿外用剤を使うことで、皮膚のバリア機能を回復し、アレルゲンの侵入予防につながります。
ステロイド外用剤
主に使用される炎症を抑える主力のお薬です。
薬によって強さが異なり、皮膚炎の重症度や塗布する部位に応じて適切なステロイド外用剤を選択します。
ステロイドについては誤解や不安をお持ちの方もいらっしゃいます。
長期にわたって連用した場合や、皮膚が薄くデリケートな部位に強いステロイドを使用し続けることによって、塗った場所に局所性の副作用がでることもあります。
副作用の多くは一過性で、多くは適切な使用で落ち着きます。
医師の指示のもと適切にお使いいただけます。
タクロリムス軟膏
アレルギーの免疫反応を抑える抗炎症作用により、赤みや痒みを抑える塗り薬です。
炎症を抑える強さは、ミディアム〜ストロングクラスのステロイド外用剤と同程度とされています。
有効成分の分子量が大きいので、皮膚の状態の悪いところからは吸収されますが、正常な皮膚からはほとんど吸収されません。
使いはじめの数日間は塗った部位のひりつきやほてりを感じることがありますが、継続して外用すると刺激感は次第になくなります。
デルゴシチニブ軟膏
炎症に関わる酵素の働きを阻害することによって炎症や痒みを抑制します。
炎症を抑える強さは、ミディアム〜ストロングクラスのステロイド外用剤とほぼ同程度の効果が期待できるとされています。
ジファミラスト軟膏
炎症に関わる酵素の働きを抑える塗り薬です。
多くの免疫細胞に存在する酵素で、炎症を引き起こす物質の産生に関わっています。
この酵素の働きを抑えることで、炎症を引き起こす物質の産生を少なくして、症状を改善します。
注射薬(生物学的製剤)
中等度〜重症の方に対する新しい生物学的製剤です。
- 皮膚の炎症を根本から抑える作用
- ステロイドや保湿剤だけでは改善しない場合に検討します
▶️ 当院ではデュピクセント®治療をはじめとする生物学的製剤による治療に対応しており、適応や副作用について丁寧にご説明したうえで導入を検討します。
今までの治療法で十分な効果が得られない方に適用があります。
経口JAK阻害薬に比べて全身的な免疫抑制などの副作用が少なく、事前の感染症やX線検査が必須ではないなどのメリットがあります。
当院で処方します注射薬(デュピクセント®、ミチーガ®、アドトラーザ®、イブグリース®)は自宅で自己注射が可能です。
頻回にクリニックを受診するのが難しい方には、特にお勧めです。
薬剤によっては、結膜炎や注射部位が軽く腫れるなどの副作用が生じることがあります。
詳細は診察時にご説明いたします。
デュピクセント®
炎症やかゆみを引き起こす物質を抑えることで、主な要因である炎症、痒み、バリア機能低下に対する効果が期待できます。
ミチーガ®
痒みを誘発する物質の働きをブロックすることによって痒みを抑えます。
アドトラーザ®
患者さまの皮膚では痒みを誘発する物質が過剰に発現しており、その発現量は重症度と相関しています。
この薬は痒みを誘発する物質を阻害することで効果を発揮します。
イブグリース®
痒みを誘発する物質の働きを選択的に抑えることで、かゆみや炎症を内側から抑制し、皮膚状態を整えることが期待されます。
※どの治療・お薬が適しているかは、症状や経過を診たうえで医師がご提案します。
よくある質問
Q1. アトピー性皮膚炎は治る病気ですか?
A1. 完全に「治る」と言い切るのは難しいですが、症状を抑えて日常生活に支障がない状態に保つこと(寛解)が可能です。
Q2. ステロイドはずっと使い続けて大丈夫ですか?
A2. 適切に使えば非常に効果的な薬です。
強さや使用期間は皮膚科専門医が調整しますので、自己判断でやめないようにしましょう。
治療をご希望される患者さまへ
アトピー性皮膚炎は、見た目だけでなく、かゆみや不眠、生活への支障など心身に大きなストレスをもたらす病気です。
当院では、「できるだけ快適に日常を過ごせる」ことを目指しています。
治療は一律ではなく、その方に合った方法を一緒に探していくスタイルです。
デュピクセント®を使用した専門的な治療に対応しながらも、保湿やスキンケアのアドバイスなど、基本を大切にした診療を心がけています。
どうぞ安心してご相談ください。
