アスコルビン酸(ビタミンC)の効果と高濃度ビタミンC点滴の違いについて

「最近、肌の調子が気になるな…」「血圧が高めで心配…」そんなお悩みを抱えてはいませんか? 美容や健康のために、日頃からサプリメントで「ビタミンC(アスコルビン酸)」を摂っているという方は非常に多いのではないでしょうか。

実は、この身近なアスコルビン酸には、私たちの想像をはるかに超える深い薬理効果があることが、近年の最新研究で次々と明らかになってきています。ただのビタミンの枠にとどまらず、医療の最前線で命を救う治療薬として、あるいは肌を若返らせる美容成分として、世界中で熱い視線が注がれているのです。

しかし、その一方で「どうやって取り入れればいいのか」「たくさん摂れば摂るほど体に良いのか」といった疑問をお持ちの方もいらっしゃるかもしれません。使い方を間違えると、思わぬ危険性が潜んでいることも分かってきています。

今回は、アスコルビン酸が私たちの体にどのような効果をもたらすのか、そして安全に活用するためのポイントについて、一緒に詳しく見ていきましょう。

アスコルビン酸(ビタミンC)とは?

「ビタミンC」という言葉は、皆さんも毎日のように耳にするのではないでしょうか。ドラッグストアのサプリメントコーナーや、コンビニの飲料などでもすっかりおなじみですよね。実は、このビタミンCの正式な医学的・化学的な名称がアスコルビン酸なのです。

アスコルビン酸は、私たちの体の中で様々な生命活動を支えてくれる「水溶性(水に溶けやすい性質)」の抗酸化物質です。抗酸化物質とは、体がサビつくの(酸化ストレス)を防いでくれる、いわば体を守る頼もしいボディガードのような存在といわれています。

犬や猫など、多くの動物は自分の体内でこのアスコルビン酸を作り出すことができます。しかし、驚くべきことに私たち人間は、進化の過程で「L-グロノラクトンオキシダーゼ」という、アスコルビン酸を体内で自発的に合成するために必要な酵素の遺伝子を失ってしまいました。

そのため、私たちは生きていくために必要なアスコルビン酸を、完全に外部からの供給に頼らなければなりません。具体的には、以下のようなアプローチが必要になります。

  • 毎日の食事(新鮮な野菜や果物など)からの日常的な摂取
  • 市販のサプリメントによる積極的な経口補給
  • 医療機関での静脈内投与(点滴)による直接的な治療

このように、私たちが生きていく上で絶対に欠かせない必須の栄養素であるからこそ、「どのように体に取り入れるか」によって、その働きや効果が大きく変わってくるのですね。

アスコルビン酸(ビタミンC)の塗り薬の美容への効果は?

アスコルビン酸(ビタミンC)というと、「美容」を真っ先に思いますよね。アスコルビン酸は、皮膚科学や美容医療の分野でも、シワの改善や美白の目的で非常に幅広く使われています。

まず、抗老化(アンチエイジング)効果についてです。

肌のハリや弾力を保つ「コラーゲン」を作るためには、アスコルビン酸が絶対に欠かせません。研究によると、5パーセントのアスコルビン酸が配合された外用剤(クリームなど)を6ヶ月間継続して塗ることで、肌の見た目だけでなく、組織学的な真皮の縦溝(つまり深いシワ)が統計学的に有意に改善することが確認されています。また、紫外線による赤みや細胞のダメージを抑える「光老化」の予防にも絶大な力を発揮します。

次に、美白効果です。

シミの原因となるメラニン色素を作り出す酵素(チロシナーゼ)の働きを邪魔することで、色素沈着を防ぎます。実際、 特発性肝斑(かんぱん)に悩む女性を対象にした興味深い研究があります。顔の半分に5パーセントのアスコルビン酸を、もう半分に美白治療の基準とされる4パーセントのハイドロキノンを16週間塗りました。

結果はどうだったか。患者さんの主観的な改善度合いはハイドロキノンの方が高かった(93パーセント対62.5パーセント)のですが、専用の機器で測定した客観的な美白効果には差がなかったのです。

ここで注目すべきは副作用です。ハイドロキノンを塗った側は約68.7パーセントの人に赤みや炎症が出たのに対し、アスコルビン酸を塗った側はわずか6.2パーセントでした。つまり、アスコルビン酸は肌にとても優しく、長期間安心して使い続けられる美白成分であると言えますね。

特に「ハイドロキノンを使って顔が赤くなってしまった」という人には、美白対策としてビタミンCの塗り薬もオススメになります。レチノールとの相乗効果で塗布後4週間でシワや色素沈着が改善したというデータもありますね。

最近では、美容液をただ塗るだけでなく、極細の針がついたローラー(マイクロニードル)や超音波(ソノフォレーシス)を使って、肌の奥深くへと成分を届ける工夫もされています。マイクロニードルを併用すると、肌の赤みが23.5パーセントも改善し、約88パーセントの方が肌の明るさ(ブライトニング)の向上を実感したというデータもあります。

美容医療の進歩により、アスコルビン酸の持つ力がますます引き出されているのです。

(参照:、A double-blind randomized trial of 5% ascorbic acid vs. 4% hydroquinone in melasma (PubMed)

アスコルビン酸の点滴や内服による美容への効果は?

では、体の内側からアスコルビン酸をいれた場合はどうなんでしょうか。点滴と内服それぞれの場合についてみていきましょう。(本当は高血圧や心臓に対する効果、免疫力など美容以外の効果もあるんですが、紹介しきれないので、ここでは「美容の効果」について説明します。)

① アスコルビン酸内服(経口摂取)による美容効果

「毎日の点滴は難しくても、サプリメントや内服薬なら続けやすい」という方も多いのではないでしょうか。実は、口からの摂取であっても、シワの減少やキメの改善、紫外線からの防御といった様々な美容効果を示す、信頼性の高いエビデンス(科学的根拠)が存在します。

まずは、シワの減少と肌のキメ(真皮密度)の向上します。

例えば、40歳から65歳の女性87名を対象に行われた、16週間にわたる本格的なランダム化二重盲検プラセボ対照比較試験です。

この研究では、5gの加水分解コラーゲンに80mgのアスコルビン酸を配合したシロップを、毎日続けて飲んでもらいました。 その結果、アスコルビン酸入りのシロップを飲んでいたグループは、偽物のシロップ(プラセボ)を飲んでいたグループに比べて、皮膚の測定器による客観的な評価において、真皮(肌の奥深く)の密度が有意に高くなり、肌のテクスチャ(キメ)が整い、シワの重症度が著しく減少していることが確認されたのです。

アスコルビン酸がコラーゲンの働きをしっかりとサポートした素晴らしい一例ですね。

次に、紫外線によるお肌の酸化ストレスをブロックします。

これは、健康な被験者12名を対象に、1日500mgのアスコルビン酸サプリメントを8週間続けて飲んでもらう臨床試験です。その結果、血液中だけでなく、実際の皮膚組織の中のアスコルビン酸濃度がしっかりと上昇していることが分かりました。

さらに、紫外線(UVB)を浴びたときに肌の細胞がダメージを受け、酸化してしまうことで発生する「マロンジアルデヒド(MDA)」という悪玉物質のレベルが、アスコルビン酸の内服によって有意に減少することが実証されているんです。

さらにです。ビタミンEやL-システインとの相乗効果も確認されています。

例えば、 あるランダム化比較試験(RCT)では、アスコルビン酸とビタミンEを組み合わせた3ヶ月間の共同内服により、紫外線(UVB)による皮膚の細胞損傷(DNAの傷の指標であるチミンダイマーの形成)が有意に減少(p < 0.05)することが実証されています。

また、2009年に行われた日本国内で発表された12週間のオープン臨床試験においても、嬉しい報告があります。L-システインとアスコルビン酸(ビタミンC)を配合した経口薬を継続して服用した結果、年齢とともに気になりやすい老人性色素斑(いわゆる一般的なシミ)に対して、統計学的に有意な臨床的改善効果が認められました。

このように、ビタミンCは他の成分と組み合わせることで、さらなる紫外線の防止効果や美白効果が期待されるというわけです。

(参照:The Effects of Dietary Supplementation with Collagen and Vitamin C and Their Combination with Hyaluronic Acid on Skin Density, Texture and Other Parameters: A Randomised, Double-Blind, Placebo-Controlled Trial
(参照:UVR-induced oxidative stress in human skin in vivo: effects of oral vitamin C supplementation
(参照:Evidence-Based Utility of Adjunct Antioxidant Supplementation for the Prevention and Treatment of Dermatologic Diseases: A Comprehensive Systematic Review
(参照:論文「色素沈着症に対するN1901A(L-システイン、ビタミンC配合経口薬)の臨床効果」

② アスコルビン酸点滴(静脈内投与)による美容効果

では、アスコルビン酸を点滴で投与した場合はどうなのか。

点滴の最大の強みは、口から摂取したときのような「腸からの吸収の制限」を完全にすり抜けることができる点にあります。そのため、血液中のアスコルビン酸の濃度を一気に高いレベルへと引き上げることができ、高い即効性や、肌組織への優れた移行性が期待できるのです。

まずは、レーザー治療後の色素沈着を速やかに改善します。

美容皮膚科などで受けるレーザー治療はとても効果的ですが、施術のあとに一時的な肌の赤みや、炎症性色素沈着(PIH)と呼ばれるシミのような黒ずみができてしまうことがありますよね。そうしたPIHに対して高用量のビタミンCが使われることがあります。

例えば、難治性の肝斑(かんぱん)に悩む51歳の女性患者さんの事例では、レーザー治療のあとに悪化してしまった色素沈着に対して、1回あたり7gのアスコルビン酸点滴を合計3回(最初の2回は1週間おき、3回目は5ヶ月後)投与しました。その結果、肌が過度に乾燥するなどの副作用を一切起こすことなく、レーザー後の色素沈着が明らかに改善し、その美しい効果がしっかりと持続したことが報告されています。

また、シンガポールなどの一部の国々では、高濃度のビタミンC点滴が、メラニンの生成を抑えて肌を白くする美白治療や、コラーゲンの生成を促して肌のハリや弾力を取り戻す若返り(エイジングケア)のプログラムとして、すでに広く臨床で応用され、多くの支持を集めていますね。

さらに、施術のあとに体内で発生する活性酸素を消去し、炎症を抑える働きもあるため、美容施術のあとのダウンタイム(肌が元の状態に回復するまでの期間)や肌の赤みを長引かせないための併用療法としても、点滴が非常に役立っているのです。

当院では、安全な「白玉点滴」と組み合わせて「プレミアム白玉点滴」としてアスコルビン酸を投与しています。

(参照:Intravenous vitamin C in the treatment of post-laser hyperpigmentation for melasma: a short report (PMC2645136)
(参照:Effects of High Doses of Vitamin C on Cancer Patients in Singapore

アスコルビン酸点滴と高濃度ビタミンC点滴の違いは?

さて、医療現場や美容クリニックなどで「ビタミンC点滴」という言葉を耳にしたことがあるかもしれません。実は、点滴には大きく分けて「標準的なアスコルビン酸点滴」と「高濃度ビタミンC点滴」の2種類があり、この二つは体内での働き方が全く異なるのです。

何が違うのかを一言でいうと、「血中濃度の桁違い」と「薬理作用の逆転」です。

標準的な点滴は、一度に1グラムから2グラム程度を投与します。この量だと、血液中の濃度は経口摂取の数倍(マイクロモルという単位のレベル)に留まります。この状態でのアスコルビン酸は、私たちがよく知る「強力な抗酸化物質」として働きます。細胞を守り、免疫をサポートし、傷の治りを早くしてくれる、いわゆる「体を守る良い成分」です。

一方、「高濃度ビタミンC点滴」では、一度に25グラムから100グラムという、桁違いの大量投与を行います。すると血液中の濃度は、標準点滴の数十倍(ミリモルという単位のレベル)という超高濃度に達します。 驚くべきことに、ここまで濃度が上がると、アスコルビン酸は「抗酸化物質」から、一転して「酸化促進物質(プロオキシダント)」へと性質を変えるのです。

この超高濃度のアスコルビン酸は、血液中の鉄などの金属イオンと反応して、大量の過酸化水素(強力な活性酸素の一種)を発生させます。正常な細胞はこれを無毒化する酵素を持っているので平気なのですが、がん細胞などはこの酵素が少ないため、発生した過酸化水素によって直接ダメージを受け、自ら死滅していく(アポトーシス)ように仕向けられます。

そのため、高濃度ビタミンC点滴は「がん細胞を狙い撃ちにするための攻撃的な治療」として応用されているわけです。同じ成分でも、量が変わるだけで「守り」から「攻め」へと働きが180度変わるのは、本当に不思議ですよね。

先の点滴の臨床例も比較的高濃度で行われますので、「攻め」の点滴をしたい場合は、高濃度ビタミンCを選ぶとよいでしょう。詳しくは高濃度ビタミンC点滴の効果や頻度・エビデンスについて【がん・風邪・肌】を参照してください。

(参照:High-dose intravenous vitamin C in cancer therapy (PMC12704205)

アスコルビン酸(ビタミンC)の危険性は?

このように素晴らしい効果を持つアスコルビン酸ですが、「たくさん摂れば摂るほど健康になれる」というわけではありません。もちろんどんな治療にもリスクは伴います。

第一に気をつけなければならないのが、「G6PD欠損症」という遺伝的な体質を持つ方への高濃度点滴です。この体質の方が高濃度(特に15グラム以上)のアスコルビン酸点滴を受けると、赤血球が急激に壊れてしまう「急性溶血性貧血」という非常に恐ろしい副作用を引き起こします。

過去の報告でも、重篤な副作用を起こした方の多くがこの体質であり、点滴開始から3日以内に急性腎障害などを併発して亡くなってしまったケースもあるほどです。そのため、高濃度点滴を受ける前には、必ずG6PDの血液検査を受けることが世界的な絶対ルールとなっています。

第二に、「急性シュウ酸腎症」と結石のリスクです。

アスコルビン酸は体内で代謝されると「シュウ酸」という物質になり、尿から排出されます。もともと腎臓の働きが弱い方が大量に摂取すると、腎臓の中でシュウ酸の結晶が固まってしまうことがあるのです。腎臓に不安のある方や普段の尿に「シュウ酸」がでてしまう人はすこし注意が必要ですね。

とはいえ、ビタミンCは非常に安全性の高いビタミンです。すべてにおいて摂り過ぎはよくないですが、ぜひ積極的に取り入れてほしいと思います。

(参照:Vitamin C-induced Hemolysis: Meta-summary and Review of Literature

まとめ

私たちにとって身近な存在であるアスコルビン酸(ビタミンC)は、血圧を下げて血管を守り、肌に若々しさをもたらす一方で、高濃度になればがん治療の現場でも活躍するほどの凄まじいパワーを秘めています。

しかし、その力の大きさゆえに、誤った使い方をすれば思わぬ健康被害を招く刃にもなり得ます。 「たくさん摂れば良い」という思い込みを捨てて、ご自身の目的に合わせた適切な量と方法、そして必要な期間を正しく守ることが、アスコルビン酸の恩恵を安全に、そして最大限に引き出すための第一歩となります。

ぜひ今日から、正しい知識を持って、日々の美容や健康づくりにアスコルビン酸を上手に取り入れてみてくださいね。当院でも相談を随時受け付けておりますので、お気軽にご相談ください!

【この記事を書いた人】 
一之江駅前ひまわり医院院長の伊藤大介と申します。プロフィールはこちらを参照してください。

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