(*このページは2021年3月30日に更新されました)
「健康診断で、【コレステロール】が高いといわれたけど、どうすればよいかわからない」
「医師によって放っておけばよいともいわれるが、本当の所はどうなの」
この記事は、そんな方へ向けて書いています。
はじめまして。私は「一之江駅前ひまわり医院(内科・皮膚科)」院長の伊藤大介と申します。
これまで内科・皮膚科を中心にさまざまな健康トラブルについて、患者さんと一緒に考え、アドバイスをしてまいりました。
またかかりつけ医の「プロ」として、日々勉強するとともに、常に患者さんに医学的な最新情報を提供していきたいと思っております。
この記事では、脂質異常症(高脂血症)を中心に、患者さんの視点でできるだけわかりやすくお話しようと思います。
健康診断でお悩みになっていた方の一助となれば幸いです。
目次
1, 脂質異常症(高脂血症)とは何か
脂質異常症とは、一言でいうと「脂質のバランスが崩れた状態」のことです。
従来、「コレステロールが高い=高脂血症」として治療の対象になってきていましたが、善玉のHDLコレステロールが低い方も「高脂血症」の治療対象になることから、2007年から名称が「脂質異常症」に変わりました。
具体的には、次の場合が「脂質異常症」になります。
LDLコレステロール | 140mg/dl以上 | 高LDLコレステロール血症 |
129~139mg | 境界型高LDLコレステロール血症 | |
HDLコレステロール | 40mg/dl未満 | 低HDLコレステロール血症 |
中性脂肪(TG) | 150mg/dl以上 | 高トリグリセライド血症 |
LDL・HDLとはそれぞれ
Low Density Lipoprotein(低濃度リポたんぱく質)、High Density Lipoprotein(高濃度リポたんぱく質)の略で脂肪の運搬を担当します。
LDLは、本来なら細胞に取り込まれ、細胞膜の形成など身体を作るのに重要な役割を果たします。
しかし、LDLが過剰になりすぎると、血管壁にたまってきて、血管壁にたまってきます。通称「プラーク」とよばれ、炎症反応を起こし、心筋梗塞や脳梗塞などの引き金になることが知られています。
このことから「LDL =悪玉コレステロール」といわれるようになりました。
一方、HDLは組織にたまったコレステロールを排泄し、血管壁を正常に保つ作用があります。HDLが多いほど動脈硬化を防ぐ作用が強く、「善玉コレステロール」といわれています。
中性脂肪は、いわゆる「あぶら」のことです。生活習慣の乱れに伴って高くなることが多く、食べ過ぎが密接に関係しています。あまりに多い場合は、大きい血管が詰まりやすくなったり、すい臓の炎症が出やすくなったりします。
2, 脂質異常症とわかったらどうするのか
① 問診
どれくらい脂質異常症が悪いのかを重症度で考えます。
LDL、HDL、中性脂肪のうち特に重要な指標が「LDL」なので、LDLを中心にお話します。
まず重要なのは、「心臓発作(冠動脈疾患)にかかったことがあるか」です。
心臓発作がある場合は、2次予防(再発を予防する)目的で、LDLコレステロールを「100 mg/dl」以下にします。
それ以外でも、「糖尿病」や「慢性腎不全」「脳梗塞」などがあった場合は、高リスク群です。高リスク群だと、10年間に心臓の血管が詰まる可能性は9%以上といわれています。
「高リスクでも案外低いじゃないか」と思うかもしれませんが、心臓の血管は一度詰まって、筋肉が壊死すると、その筋肉はもとには戻りません。それが約10人に1人の確率で起こると考えたら・・・とても怖い話ですね。
その他に、喫煙しているか、高血圧や家族歴などを診て、将来どれくらいの確率で心臓発作や脳梗塞などが起こりやすいかを分類します。
一番有名なのは、吹田研究から求められた吹田スコアで、下記の表になります。

② 身体診察・検査
脂質異常症の診察では、
- 血管がどのくらい詰まりやすいのか
- 心臓の音は問題ないか
- 脂肪が実際に身体にたまっていないか
- ホルモンなどの異常で、2次的に脂質異常症になっていないか
などを中心に、診察していきます。検査は血液検査が中心ですが、頸動脈のエコーや心電図などをとることもあります。
③ 生活指導・薬物療法
脂質異常症の多くの方は、生活面が問題になっていることが多いので、生活指導はとても重要です。
生活背景から、心理面やストレス、普段の食事の種類や量などをくわしく聞きながら、患者さんにあったアドバイスをしていきます。
どういった食事がよいかはあらためて書きたいと思いますが、
一般論として
- 加工食品を少なくする
- マーガリンやショートニングを少なくし、オリーブ油・魚油に置き換える
- 野菜中心にする
- 食物繊維をたっぷりとる
- ナッツ類(クルミやアーモンド)などをお菓子の代わりに置き換える
などは特に重要です。しかし、患者さんの背景によってアドバイスが全く異なることもよく経験するので、一緒に悩み解決策を探っています。
軽症で生活習慣で治らない場合、薬物療法を加えます。また、重症度によっては薬物療法に入りながら、生活習慣を正していく場合もあります。
ここでよく「コレステロールを下げる薬って、一生飲みつづけないといけないのではないか」
とよく質問を受けます。
疾患や状態にもよりますが、一生飲み続けるわけではありません。
生活習慣が良くなって、コレステロールも改善してお薬をやめた患者さんは何人も経験しています。
もちろん必要な場合は投与しますが、あくまで薬は下支え。
脳梗塞や心臓発作にならないための予防する車の補助輪のように考えていただくとよいでしょう。
まとめ
今回は、脂質異常症の治療の大まかな流れを解説していきました。
健康診断の「コレステロール」で引っかかり心配な方も、ぜひ「ひまわり医院(内科・皮膚科)」に気軽にご相談ください。
患者さんと一緒に悩み、親身に解決していきます。
参考文献
1, 動脈硬化性疾患予防のための脂質異常症診療ガイド 2018年版
2, 日本動脈硬化学会HP:http://www.j-athero.org/qanda/
3, 動脈硬化性疾患予防ガイドライン・エッセンス(日本心臓団体):https://www.jhf.or.jp/pro/a&s_info/guideline/post_2.html