足の指の間が白くふやけて皮がむけたり、かかとがガサガサしてひび割れたりして、「もしかして水虫かな?」と悩んだことはありませんか? 足の悩みはなかなか人に相談しづらく、恥ずかしくて一人で抱え込んでいる方もいらっしゃるかもしれませんね。
しかし、心配しすぎる必要はありません。水虫は決して珍しい病気ではなく、日本人の多くが抱える非常に身近な悩みのひとつなのです。
今回は、最新の医学的なデータや日本皮膚科学会などが策定した「皮膚真菌症診療ガイドライン2025」の知見をもとに、水虫とはどのようなものなのか、その症状やうつりやすさ、そして効果的な治し方について分かりやすく解説していきます。
水虫で絶対してはいけない3つのことを最後に動画でまとめましたので、合わせて参考にしてください。
水虫(白癬)の原因は?

水虫とは、足の指や爪の間、足底、手指などの湿度の高い部分に発生する「白癬菌」とよばれる真菌感染症(カビの1種)のこと。そもそも水虫とは、医学用語で「白癬(はくせん)」と呼ばれる表在性皮膚真菌症のことです。原因となっているのは「皮膚糸状菌(Dermatophytes)」という真菌、つまりカビの仲間です。
一般的なカビが湿気の多いお風呂場などに生えるように、この白癬菌もジメジメとした環境を好みます。そして白癬菌には、人間の皮膚の表面にある角質層や、爪、髪の毛などに含まれる「ケラチン」というタンパク質を栄養源にして生きるという大きな特徴があります。白癬菌はケラチナーゼという酵素を出して強固なケラチンを分解し、そこを住み処にして増殖していくのです。
日本では靴を履いて過ごす時間が長く、足元が高温多湿になりやすいため、白癬菌にとって非常に快適な環境が作られています。 全国的な疫学調査のデータによると、日本における足白癬(足の水虫)の全体的な罹患率は人口の約13.7%と推計されています。さらに、病状が進行して爪にまでカビが入り込んだ「爪白癬(爪の水虫)」の罹患率も約7.9%にのぼりますね
特に足の水虫は、気温や湿度が上がり始める5月の時点ですでに国民の5人に1人(約20%)が感染しているといわれています。これが真夏になればさらに割合が高くなることは容易に想像できますよね。水虫は一部の人だけの特別な病気ではなく、誰にでも起こりうる国民的な感染症だということがお分かりいただけるのではないでしょうか。
(参照:Jpn. J. Med. Mycol. Vol. 47, 69-73, 2006. 爪真菌症:疫学, 診断, 治療の最近の進歩)
(参照:日本皮膚科学会HP「皮膚科では白癬患者はどのくらいいるのですか?」)
(参照:皮膚真菌症診療ガイドライン 2025)
水虫(白癬)の主な症状は?

一口に水虫と言っても、実はいくつかのタイプに分かれており、それぞれ症状が異なります。足の水虫は大きく分けて以下の3つの臨床型に分類されますね。
① 趾間型(しかんがた)
足の指の間、特に最も蒸れやすい薬指と小指の間(第4趾間)によく見られるタイプです。
初期は赤くなったり皮がむけたりする程度ですが、進行すると白くふやけてジュクジュクになり、亀裂(ひび割れ)が入ることもあります。このひび割れから細菌が入り込むと、蜂窩織炎(ほうかしきえん)という重篤な感染症を引き起こすリスクがあるため注意が必要です。
② 小水疱型(しょうすいほうがた)
足の裏や側面、土踏まずのあたりに、数ミリ程度の小さな水ぶくれが多発するタイプです。白癬菌に対する強いアレルギー反応によって起こり、非常に強いかゆみを伴うのが特徴です。
水ぶくれはやがて破れて皮が剥がれ落ちますが、これを慢性的に繰り返してしまいます。
③ 角質増殖型(かくしつぞうしょくがた)
かかとを中心に足の裏全体の皮膚が分厚く硬くなり、表面がザラザラになるタイプです。「水虫=かゆい」というイメージがありますが、このタイプは炎症が少なく、かゆみを感じないことが多いため、ただの乾燥やひび割れだと勘違いして放置されがちです。
冬の乾燥する時期には深い亀裂が生じて歩くのが痛くなることもあります。
さらに、これらの足の水虫を放置していると、白癬菌が爪の中に入り込み「爪白癬」を引き起こします。爪白癬になると爪が白や黄色に濁り、分厚くボロボロと崩れるようになります。 爪の中は季節の温度や湿度の変化を受けにくいため、爪白癬には季節的な変動があまり見られません。
なんと日本国内には、季節を問わず常時1000万人以上の爪白癬患者が存在していると推計されています。 特に年齢が上がるにつれて罹患率は顕著に増加し、90歳以上の男性では有病率が5割(50%)を超えることが分かっています。
免疫力の低下や足のケアが難しくなることが背景にあると考えられています。
水虫はうつるの?

「家族に水虫の人がいるから、自分にもうつるのではないか」と不安に思う方は多いですよね。結論から言うと、水虫はうつります。しかし、人と人が直接触れ合うことでうつるわけではありません。
水虫の感染は、感染者の足から剥がれ落ちた垢や角質(落屑)の中に潜んでいる白癬菌が、床やバスマットなどを介して他の人の足に付着することで起こります。
最新の疫学調査では、驚くべきデータが報告されています。足の水虫に感染している人のうち、なんと65%という高い確率で環境中に白癬菌をばらまいている(散布している)ことが分かりました。
また、年齢層別に見ると、一般成人の散布割合が9.1%であるのに対し、高齢者の集団では40.8%もの人が白癬菌を散布していることが判明しています。
つまり、同居する家族に水虫の方がいる場合や、高齢者施設などでは、共有の床やスリッパなどが常に白癬菌で汚染されている可能性が高いのです。
(参照:Jpn. J. Med. Mycol. Vol. 47, 63-67, 2006 ISSN 0916-4804.皮膚真菌症と環境)
(参照:Epidemiological Study on Trichophyton Disseminating from the Feet of the Elderly)
水虫の薬は?

水虫(白癬)の治療には塗り薬と飲み薬があります。日本皮膚科学会の水虫の治療ガイドラインでは、では「足や手の水虫については塗り薬を、爪白癬の合併例に関しては飲み薬を第一選択にすべきである」とされていますね。
それぞれの水虫の治療方法について説明していきます。
① 水虫の薬その1:塗り薬
昔は「水虫の治療薬ができればノーベル賞」と言われましたが、現在は数多くの水虫の塗り薬があり、根気よく続ければ完治することも可能です。代表的な薬としては
- ルリコナゾール(ルリコン®)(ルコナック®)
- ラノコナゾール(アスタット®)
- ビホナゾール(マイコスポール®)
- ケトコナゾール(ニゾラール®)
- 塩酸テルビナフィン(ラミシール®)
- エフィナコナゾール(クレナフィン®)
がありますね。上記にあげた薬は1日1回投与でよく、続けるうちに症状の改善も実感できるでしょう。軟膏タイプやクリームタイプ、液体タイプなど、さまざまなタイプがあり、状態によって使い分けます。
一般的には軟膏タイプは低刺激で幅広い病変に使える分、べとつきを感じやすい欠点があり、クリームタイプは塗りやすい分、あまりジクジクした病変では刺激が出ることがあります。
より塗り薬の効果を高めるためには以下を気をつけるとよいでしょう。
- お風呂あがりに使用する:お風呂上りは角質が一番ふやけており、薬の浸透率も高くなります。1日1回の製剤が多く、2回や3回つける必要はありません(一部複数回つける薬もあります)
- 医師の指示通りに塗る:大きく分けると爪水虫と他の水虫では塗り方が大きく異なります。例えば爪水虫の薬(クレナフィン®・ルコナック®)は爪専用に改良された薬であり、足に塗ると副反応が非常に強く出るので、ついたらは早めに拭くなどのケアが必要です。個々の薬剤で異なるので、医師の指示に従って塗るようにしましょう。
- 水分をきちんとふき取ってから塗る:水分がついている状態だと、濃度が薄くなってしまう可能性があります。足の指の間や陰部など、湿気がたまりやすい場所はしっかりと拭くとよいでしょう。
- 症状が治ってからもしばらく使う:症状がなくなれば「終了」ではありません。必ず症状が治っても菌が生着しています。治ったとおもってからしばらく使った方が再発しなくなっていくので、根気よく続けましょう。
塗り薬で治療可能になっているものの、水虫は1週間や2週間では治らず根気が必要です。水虫が治るまでの期間としては、
- 指(趾)間型では 最低2 カ月以上
- 小水疱型(汗疱型)では最低 3 カ月以上
- 角化型で最低 6 カ月以上
- 爪水虫では最低6か月~1年以上
が目安となります。繰り返しますが「治ったから大丈夫」と考えていると再発しやすくなるので、必ず自己判断せずに皮膚科でチェックしてもらいましょう。
② 水虫の薬その2:飲み薬
一方で、爪の水虫(爪白癬)の治療は少し厄介です。硬い爪の成分がバリアとなって、普通の塗り薬では成分が中まで浸透しないからです。そこで、白癬菌をターゲットにした内服治療がガイドライン上で第一選択とされています。代表的な水虫の飲み薬の治療薬は
- テルビナフィン(ラミシール®)
- イトラコナゾール(イトリゾール®)
- ホスラブコナゾール(ネイリン®)
です。テルビナフィンの内服は6か月間、イトラコナゾール・ホスラブコナゾールは3か月間内服します。治る確率は塗り薬にくらべて圧倒的に高いのですが、
- 併用注意が必要な薬がある
- 肝臓を中心とした内臓に影響を与える薬があるため、定期的な採血が必要になる
点には注意が必要です。1か月に1回を目安に採血で確認することが一般的になります。そのため、患者さんの希望やライフスタイルに合わせて、塗り薬にするか飲み薬にするか十分説明した上で選択していただくようにしています。
➂ 水虫の薬その3:爪の特殊な塗り薬
爪水虫の飲み薬(経口抗真菌薬)の服用が標準的な治療法ですが、、飲み薬は肝機能障害などの副作用リスクがあり、定期的な血液検査が必要になります。ご高齢の方で他にもたくさんのお薬を飲まれている場合は、飲み合わせの問題で使用できないこともありました。
そこで近年登場したのが、爪白癬のために開発された新しい塗り薬
- クレナフィン®(エフィナコナゾール)
- ルコナック®(ルリコナゾール)
です。これらは特殊な技術で硬い爪を透過し、爪の奥の病変部までしっかり成分を届けることができます。
飲み薬に比べると治癒率は少し下がりますが、全身への副作用リスクが低く血液検査も不要なため、現在日本の臨床現場で非常に多く使われるようになっています。
実際、「皮膚真菌症診療ガイドライン 2025」でもこうした爪の塗り薬はGrade B(行うように奨める)とされています。
(参照:皮膚真菌症診療ガイドライン 2025)
水虫の治し方はあるの?日常生活で気を付けること

医療機関で適切なお薬を処方してもらうことはもちろん大切ですが、それと同じくらい、ご自身での毎日のケアや環境づくりが重要になります。以下のポイントを押さえて、水虫の予防と完治を目指しましょう。
① 24時間以内に足を優しく洗う
白癬菌が足の皮膚に付着したからといって、すぐに水虫になるわけではありません。健康な皮膚であれば、菌が角質層のバリアを突破して感染が成立するまでに「最低でも24時間」かかるといわれています。
つまり、毎日お風呂に入った際に石鹸で丁寧に足を洗い流せば、感染を未然に防ぐことができるのです。公衆浴場やジムに行った日も、帰宅後に足を洗うルーティンを作りましょう。
② 絶対に「ゴシゴシ洗い」はしない
足を清潔にしようとして、軽石や硬いナイロンタオルでゴシゴシと擦って洗っていませんか?
実はこれは絶対にやってはいけない行為です。
物理的な摩擦で皮膚に目に見えない微細な傷がつくと、皮膚のバリア機能が壊れ、感染成立までの時間が24時間から半分の「12時間」へと大幅に短縮されてしまうからです。
石鹸をしっかり泡立てて、手で包み込むように優しくなでるように洗うのが正解です。
(参照:日本皮膚科学会「Q25足白癬にならないための足のケアは?」)
➂ 蒸れた状態をなくす
研究結果によると、温度は27度より35度の方が、湿度は95%より100%の方が感染しやすいことがわかっています。
汗をかいて蒸れた靴の中は、白癬菌にとって格好の繁殖場所になるので、なるべく足を蒸らさない工夫をしましょう。状況が許すなら、オフィスではスリッパに履き替えるのもおすすめです。
靴下は、ナイロンより吸湿性のよい綿などの素材や5本指ソックスの方が、足の指の間の湿気をとってくれるのでおすすめですね。
靴下は石鹸で完全に除去でき、水洗いだけでも大幅に白癬菌が減少することが言われています。なので、靴下を捨てたりなど過度に神経質になる必要はありません。安心してください。
④ お薬は症状が消えてもしばらく塗り続ける
塗り薬を使うと、比較的すぐにかゆみや見た目の症状が良くなります。しかし、ここで塗るのをやめてしまうと、角質層の奥に潜んでいた菌が再び増殖して再発してしまいます。
皮膚が新しく生まれ変わって、古い角質がすべて剥がれ落ちるまでには約4〜6週間かかります。
医師の指示に従い、見た目が綺麗になっても最低でも1〜2ヶ月は根気よくお薬を塗り続けましょう。
⑤ こまめな掃除とバスマットの個別化
家族に水虫の方がいる場合、床やバスマットには白癬菌がばらまかれています。スリッパやバスマットの共有は避け、こまめに洗濯して乾燥させることが大切です。靴も乾かしていた方がよいですね。
また、床や畳には掃除機をかけたり拭き掃除を行ったりして、落ちた角質を物理的に取り除く環境整備を心がけてください。
水虫は恥ずかしい病気ではありません。正しい知識を持ち、毎日優しく足を洗うこと、そして疑わしい症状があれば早めに皮膚科を受診して根気よく治療を続けることで、必ず良くなる道が開けます。ご自身の足の健康を守るために、ぜひ今日からできるケアを始めてみてくださいね。
【この記事を書いた人】
一之江駅前ひまわり医院院長の伊藤大介と申します。プロフィールはこちらを参照してください。
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