しもやけ(霜焼け)の原因と薬、対策について【体質改善】

寒い季節、手がかじかんでしまいますね。こんな時

  • 寒い時期になると指が、赤く腫れてしまう
  • 鼻のてっぺんやほほも、よく赤くなりやすい
  • 寒暖差が激しくなると決まって、足がむずがゆい感じになる

などのしもやけ(霜焼け)の症状でお困りな方はいませんか?しもやけと聞くと「大したことない」と思われがちですが、しもやけを放置しておくと炎症が強くなり、意外と治療が長引きやすいんですよ。

今回は、冬になると多くなる「しもやけ」について、原因や治し方・予防方法に至るまでわかりやすく解説していきます。

真冬におこりやすい「冷え性」としもやけは大きく関係しますので、【医師が解説】冷え性(冷え症)の原因や漢方薬・改善法について もあわせてご参照ください。

しもやけとは?

しもやけ(霜焼け)とは寒暖差によって血行が悪くなり炎症を起こす疾患です。医学用語では「凍瘡(とうそう)」と書きますね。

血行が悪くなり炎症をおこした部分は、痛みやかゆみを伴いながら、赤紫色の皮疹がでてくるのが特徴です。特にしもやけがよく起こりやすい場所は「手足の末端」「耳たぶ」「ほほ」「鼻先」などが赤く腫れてきます。

しもやけの症状は、次の2つの種類に大きく分かれます。

  • 樽木型(たるきがた):指や手全体が赤く腫れあがるタイプです。子供によく見られます。
  • 多型紅斑型(たけいこうはんがた):指や手全体に赤いブツブツや水膨れなどがたくさんできるタイプです。大人によく見られます。

炎症が強い場合はむくみや水ぶくれ、さらにえぐれるようになることもあります。この場合、しばしば治療に難渋します。

日本でのしもやけの有病率はあまり知られていませんが、海外の報告によると北カリフォルニア全体の年間発生率は10万人年あたり11.5例と言われていますね。(日本は温暖な気候のためか、もう少し多い印象です)

(参照:凍瘡(しもやけ)の発現機序に関する一考察
(参照:Population Characteristics, Symptoms, and Risk Factors of Idiopathic Chilblains: A Systematic Review, Meta-Analysis, and Meta-Regression

しもやけの原因は?

しもやけの原因は、寒冷刺激を何回も繰り返すことで血管が縮み、血流が悪くなるからです。

人間は寒さが強いと、自律神経の働きで末端の血管を収縮させ、体内の熱を外に逃がさないようにする働きが備わっています。そのため、寒い環境でも重要な臓器が守られ、正常に働いているのですね。

しかし、その分寒さで血流が悪くなりがちなのが末端部分。重要な臓器を守るため、末梢の血管を収縮させて自分たちを犠牲にしようとします。これが「しもやけ」の正体です。

寒暖差が大きい時期に大きく血管が収縮しやすくなるため、寒さの厳しい真冬よりも、冬のはじめや春先に起こりやすいのもしもやけの特徴です。真冬でしもやけになる場合は、暖かい場所から急に冷たい場所に移動したときになりやすいですね。

特に以下の人達がしもやけになりやすいことがわかっています。

  • 遺伝的にしもやけになりやすい人:家族歴の関与が言われています。
  • 発汗が多い人:発汗したあと放置すると汗が蒸散し、余計に熱を奪うため。普段活発に活動する子供や激しい仕事をする人にも多くなります。
  • 職業上、頻繁に水を使う人:逆に屋内作業が中心の人はしもやけになりにくくなります。
  • 特定の病気をもっている人:レイノー病や膠原病などで末梢の血管に炎症を来す方はしもやけにもなりやすいです。

しもやけは日常生活と大きく関わる疾患なので、生活スタイルによっては繰り返しやすい疾患です。そのため、早めの予防・早めのケアが大切になってきます。

(参照:あたらしい皮膚科学「凍瘡」)
(参照:Population Characteristics, Symptoms, and Risk Factors of Idiopathic Chilblains: A Systematic Review, Meta-Analysis, and Meta-Regression

しもやけの薬は?

しもやけは通常皮膚科で治療されることが多いですが、どんな薬を使うことが多いのでしょうか。しもやけの治療方法の一例として紹介していきます。

① 循環不全を改善する薬(根本治療)

しもやけの根本原因である末梢の血行不全にアプローチする薬です。

  • ヘパリン類似物質(ヒルドイド等): 日本ではよく使われますね。単なる保湿剤と思われがちですが、血行促進作用、抗炎症作用、そして皮膚バリア機能の修復作用を併せ持ちます。特に乾燥して亀裂が入るタイプのしもやけには、皮膚のバリア機能を高めることで症状を緩和させる効果が高く、予防的な常用も推奨されます。   
  • ビタミンE製剤(ユベラ等): 従来から血行促進目的で使用されています。最新の研究では、ビタミンE単独での強力な血管拡張作用は限定的であるとされていますが、皮膚の酸化ストレスを防ぎ、微小循環をサポートする補助的な役割として有用です。   
  • カルシウム拮抗薬(ニフェジピン等) 【重症例・難治例向け】: 生活指導や塗り薬で改善しない、痛みが強く生活に支障が出るような重症のしもやけに対しては、ニフェジピンなどの血管拡張薬の内服が国際的なスタンダード(第一選択)とされています。末梢血管を強力に広げる効果がありますが、本来は高血圧の薬であるため、血圧低下や頭痛などの副作用に注意が必要です。なお、保険適応外になるので、よほどのことがないと処方されません。

他にも「しもやけの治療薬」として海外では使用されたりします。

  • 5%ミノキシジル
  • ペントキシフィリン
  • タダラフィル
  • コルチステロイド
  • 局所用三硝酸グリセリル (GTN)

ただし、これらの薬もカルシウム拮抗薬同様、しもやけとしての保険適応になっていないので、併存疾患などから投与を検討する薬となりますね。

② 炎症やかゆみを抑える薬

しもやけに加えて、炎症やかゆみを抑える薬も使うことがあります。例えば下記の通りです。

  • ステロイド外用薬: 赤みやかゆみが強い急性期に使用されます。ただし、近年の研究(Souwer et al., 2017)では、ステロイド外用薬はしもやけの「治癒」そのものを早めるわけではないというデータも報告されています。あくまで「つらいかゆみを一時的に抑える薬」として位置づけ、漫然と長期使用することは避けましょう。   
  • 抗ヒスタミン薬(内服): かゆみで夜も眠れないような場合には、アレルギー薬(抗ヒスタミン薬)の内服が有効です。

これらの薬を使うときは、必ず皮膚科で相談するようにしましょう。

③ 漢方薬による体質改善

東洋医学では、しもやけのタイプ(証)に合わせて処方を使い分けることで、高い効果が期待できます。しもやけ治療として使われやすい漢方薬は、例えば次の通りです。

  • 当帰四逆加呉茱萸生姜湯(とうきしぎゃくかごしゅゆしょうきょうとう):しもやけ治療のファーストチョイス。手足が氷のように冷たく、温めると痛むタイプ。血管を広げ、体を芯から温めます。
  • 温経湯(うんけいとう):足は冷えるが、手や唇は乾燥してほてるタイプ。月経不順や更年期症状を伴う女性に向いています。
  • 当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん):色白で貧血気味、冷えと共に「むくみ」が強いタイプ。
  • 五積散(ごしゃくさん):全身が冷えており、胃腸の調子も悪い、慢性化した冷え性タイプ。

他にも冷え性で使われる漢方薬もしばしば使用されます。具体的には冷え性(冷え症)で使う漢方薬について【手足や内臓の冷え】 を参照してください。

いずれにせよ、しもやけの状態に合わせて処方される薬や治療内容は大きく変わってきます。普段のライフスタイルも含めて診療いたしますので、ぜひ相談していただけましたら幸いです。

(参照:あたらしい皮膚科学「凍瘡」)
(参照:Pharmacologic Treatment of Idiopathic Chilblains (Pernio): A Systematic Review
(参照:Assessing the effectiveness of topical betamethasone to treat chronic chilblains: a randomised clinical trial in primary care

しもやけの主な対策は?

しもやけは普段の生活で予防することが大切です。個々人でライフスタイルは大きく異なるので一概には言えませんが、しもやけの治し方や改善方法を紹介します。自分で取り入れやすい所から試してみるとよいでしょう。

① 気温に合わせて防寒対策をする

寒暖差が大きくなるとしもやけになりやすいことがわかっているので、気温に合わせて服装を変えることが大切です。

普段から気温をチェックして、気温に合わせて防寒対策をしっかり行いましょう。特に末梢部分の血流をよくするように手袋・耳当て・マフラー・カイロなどは大切ですね。(カイロは低温やけどに注意)

② 湿気や汗対策をする

多汗の方はそうでない方よりも「しもやけ」になりやすいというデータがあります。それは汗で濡れた状態を放置すると、末梢が冷えやすくなるからと考えられています。

手汗をかきやすい方は、ぬれた状態を放置せずに給水性の高い手袋を用いたり、こまめにふいたりなどして、湿気や汗を避けるようにしましょう。濡れた靴下や手袋は、乾いた状態の25倍もの速さで体温を奪うという報告もあります。

特に気を付けたいのが「靴下」。汗ばんだ靴下を放置するとしもやけが悪化する可能性があります。靴下も蒸れにくい靴下を選んでいただきながら、可能なら替えの靴下もあるとよいですね。

③ 靴下や靴は締め付けのないものを選ぶ

普段から足がむくみやすい方は、靴下のゴムで締め付けられて、末梢の血流が悪くなってしまいがちになります。

特に冷え性の方では「二枚履き」にする方がいらっしゃいます。その場合、内側に来る靴下は相当「ゆるめ」にしないと締め付けにより血行がわるくなりやすくなります。気を付けましょう。

④ 家や職場を温かくする

自分だけで防寒対策をしていても、周りの環境が寒いとやはりしもやけの原因になります。職場や家が冷えているなと感じたら、遠慮せずに暖めるようにしましょう。

⑤ しもやけが強い時はゆっくり温める

冷え切った手足を、熱いお湯やストーブ・カイロで急激に温めていませんか? 

肌が寒いところに、急に温めると一気に末梢の血管が開いてしもやけが悪化することがあります。ぬるま湯(体温程度)につけるか、室温で自然に温まるのを待ちましょう。急激な加熱は禁物です。

⑥ 血流をよくするためにマッサージする

末梢の血行不全が原因なので、マッサージも有効な手段になります。ただし、しもやけが起きている場所は炎症が起きている場所。腫れが強い部分にマッサージの刺激が加わると、炎症が強くなる可能性も。

そのため、直接しもやけが起きている場所よりもすこし離れた部分をマッサージしたほうがよいでしょう。患部には触れず、手首や足首を回す、指をグーパーさせるなど、関節運動によるポンプ作用で血流を促すとよいですね。

⑦ ただの「しもやけ」ではない場合に注意する

以下のような特徴がある場合は、通常のしもやけ(特発性凍瘡)ではなく、背後に別の病気が隠れている可能性があります(二次性凍瘡)。皮膚科の受診をお勧めします。

  1. 春や夏になっても治らない(通常、しもやけは暖かくなれば自然に治ります)。
  2. 潰瘍ができたり、痕が残ったりする
  3. 最近、感染症(COVID-19など)にかかった:コロナウイルス感染に関連して、しもやけ様の症状(COVID toes)が出ることが知られています。   
  4. 関節痛、発熱、脱毛などを伴う:膠原病(全身性エリテマトーデスなど)の初期症状としてしもやけが出ることがあります(凍瘡状ループス)。 

(参照:Mayo Clinic 「Chilblains」)

しもやけを体質改善する方法は?

では、最後にしもやけへの体質改善法は何かあるのでしょうか。正直、血行を含めた「体質」の部分はあるので、完全にしもやけ体質を治せるわけではないかもしれませんが、以下のことは実践してみてもよいでしょう。

  • 栄養療法(ビタミン・鉄分):血管の老化を防ぐ「ビタミンE」と、血管壁を強化する「ビタミンC」の積極的な摂取が推奨されます。また、隠れ貧血(鉄欠乏)は体温調節機能を低下させるため、女性は特に「鉄分」の補給が重要です。詳しくは鉄分不足の症状とは?爪の異常から眠気まで、見逃してはいけないサイン【女性・子供】を参照してください。
  • 有酸素運動(血管機能の強化):ウォーキングやジョギングを習慣にすることで、血管内皮機能(血管がスムーズに広がる能力)が高まり、寒さに対する自律神経の反応が正常化します。
  • 筋力トレーニング(熱産生の向上):筋肉は人体最大の熱産生器官です。特に「ふくらはぎ」や「太もも」などの下半身を鍛えることで、基礎代謝が上がり、体の中から温まりやすい体質へ変化します。
  • 交代浴(血管のリハビリ):約40℃のお湯(3分)と約20℃の水(1分)に交互に手足をつけることを繰り返します(最後はお湯で終わる)。これにより血管の収縮・拡張ポンプ機能を能動的に鍛え、血行を改善するといわれています。
  • 漢方薬の活用(全身調整):冷えと血管攣縮が強い場合は「当帰四逆加呉茱萸生姜湯」、ホルモンバランスの乱れや乾燥を伴う場合は「温経湯」など、体質(証)に合わせた漢方薬を継続することで根本改善を目指してもよいですね。
  • 禁煙(最大のリスク回避):タバコに含まれるニコチンは強力な血管収縮作用を持ちます。喫煙を続ける限り血行改善は困難であるため、禁煙は最も確実な体質改善手段の1つです。詳しくは禁煙外来と禁煙補助薬(チャンピックス・ニコチンパッチ)についても参照してください。
  • 自律神経のケア(睡眠・ストレス管理):血管の直径をコントロールしているのは自律神経です。十分な睡眠とリラックス時間を確保し、副交感神経を優位にすることで、末梢血管が開きやすい状態を作ります。

「しもやけ体質をどうにか改善したい」という方は、自分ができるところから、はじめてみてください。もちろん、当院でも個別に相談を受け付けていますので、お気軽にご相談ください。

あわせてこちらもオススメです

【この記事を書いた人】 
一之江駅前ひまわり医院院長の伊藤大介と申します。プロフィールはこちらを参照して下さい。

関連記事

  1. 帯状疱疹ワクチンの認知症に対する予防効果について【Natur…

  2. トコジラミの症状と対策について【韓国や日本の電車にも発生?】…

  3. 擦り傷を早く治すには?擦り傷で病院に行く目安や処置・薬につい…

  4. 大人も子供もかかる手足口病の原因や症状・治療について【発疹の…

  5. 【チェックリスト付き】日光アレルギー(光線過敏症)の症状や原…

  6. はしか(麻しん)の症状と風疹との違いについて解説

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

CAPTCHA


ピックアップ記事

新着記事 おすすめ記事
PAGE TOP