アナフィラキシーの原因や時間経過・対応について解説

アレルギー反応の中で、最も重い「アナフィラキシー」。新型コロナワクチン接種でさらに有名な言葉になりましたね。実際アナフィラキシーショックが起こったらどういった対応が求められるのでしょうか。アナフィラキシーの原因から詳しくみていきましょう。


アナフィラキシーとは?

アナフィラキシーとは、アレルギーの原因物質を体内に取り込むことで、数分から数時間以内に複数の臓器や全身に現れる激しいアレルギー反応のことです。口から入れるだけでなく、触ったり注射したり吸入したりしてもアナフィラキシーがでることがあります。

アナフィラキシーによって血圧低下や意識障害を来たし、場合によっては命にかかわることも。早急な対応が求められる疾患です。

アナフィラキシーの主な原因は?

Golden. Novartis found symp 257: 101, 2004より

アナフィラキシーの主な原因は食べ物(卵・牛乳・小麦・そば・ピーナッツなど)・(抗生物質、ワクチン、解熱鎮痛薬、麻酔薬など)・昆虫(ハチなど)が多くあります。

また、天然のゴム製品に含まれるラテックスにもアレルギー反応をしめすことがあります。実はラテックスのタンパク質の構造とバナナ・キウイ・アボカド・メロン・マンゴーなどの果物のタンパク質とが似通っており、ラテックスアレルギーがあると、こうした果物にも反応を示しやすいことがいわれています。(ラテックス・フルーツ症候群

アレルギーの原因を血液検査や皮膚反応テストなどで確かめることができます。詳細はこちらを参照してください。

血液アレルギー検査(VIEW-39、RAST)について解説 【費用・原理・信頼性】

アナフィラキシーの原因になる食べ物は?

Akiyama et al. Adv Food Nutr Res. 2011;62:139-71による)

アナフィラキシーを起こしやすい食べ物としては、卵がもっとも多く(28%)・牛乳(24%)・小麦(18%)・そば(7%)・ピーナッツ(5%)となります。口に入れてから数分以内に起こりやすくなりますが、30分以上たってから起こる場合もあります。

食べ物によるアナフィラキシーは自宅で最も起こりやすいとされており、自宅での対処を知る必要があるでしょう。

アナフィラキシーの原因になりやすい薬は?

アナフィラキシーを引き起こす薬剤は、以下の通りです。事前にアレルギー反応を起こした薬剤については目もしておいて、医療機関に伝えておくとよいでしょう。

・ 抗生剤:特にβラクタム系と呼ばれている抗生剤での報告が最多ですが、他の抗生剤での報告もあります。
・ 解熱鎮痛薬: 特にNSAIDS(ロキソニン@やイブ@)などのうち1剤に反応を示すこともありますが、複数剤にわたる方もいます。
・ 局所麻酔薬: 自覚症状を訴える方は多いですが、麻酔薬自体のアレルギー反応は稀で、局所麻酔薬に含まれる添加物や血管収縮薬に反応する場合が多いとされています。
・ 造影剤: 数千件に1件の確率でアナフィラキシーを起こすとされています。
・ 筋弛緩薬: 全身麻酔中に起こるアナフィラキシーでは最も多いとされています。
・ 輸血:赤血球製剤は87000件に1件の報告例があります。

日本アレルギー学会 アナフィラキシーガイドラインによる)

接種が始まった新型コロナワクチンについての副反応報告については、100万件中5件です。詳しくは下記を参照してください。
【接種はじまりました】新型コロナウイルスワクチン接種について

アナフィラキシーの症状は?

次の3つの項目のいずれかが当てはまっていた場合に、アナフィラキシーの可能性が高くなります。

  1. 突然(数分~数時間)、皮膚や粘膜の症状が現れ、さらに呼吸器の症状か血圧低下のうち少なくとも1つの症状がある場合
  2. 原因となるものを摂取した後、急速(数分~数時間以内)に「皮膚や粘膜の症状」「呼吸器症状」「循環器症状」「持続する消化器症状」のいずれか2つがでてきた場合
  3. すでに原因だとわかっているものを触れたり、飲んだり食べたりした数分~数時間以内に血圧の低下がみられた場合

日本アレルギー学会 アナフィラキシーガイドラインより転載)

アナフィラキシーの時間経過は?

アナフィラキシーの時間経過は、原因によって異なりますが、多くの場合「30分~60分以内」に出現します。あとは、原因物質により異なることがあります。例えば

  • ハチに刺された場合:ほとんど5分~10分以内に出現
  • 食べ物の場合: 30分以上たって出現することもある(消化管で消化吸収されるまで時間がかかるものもあるため)
  • 輸血の場合:ピークは「30分以内」「30分から60分」。ほぼ全例で3時間以内に出現
  • 生物学的製剤の場合:薬剤によって24時間以降に発症した例も報告されている・

また、「二相性反応」といって、治療を受けるなど初期症状が改善した後に再度アナフィラキシーの症状が出現することがあります(1~20%)。多くは8時間以内に発症しますが、中には72時間後に発症したという報告も。そのため、初期症状が改善した後も注意が必要です。

アナフィラキシーの治療は?

アナフィラキシーの治療薬については以下の3種類に分かれいます。

① アドレナリン筋肉注射

アナフィラキシーの治療において第1選択薬になる治療が「アドレナリン」です。

アドレナリンは人の副腎で作られるホルモンです。心臓の働きを強め末梢の血管を縮めることで血圧を上昇させる作用があります。また、気管支を拡張する作用、粘膜の浮腫を改善する作用もあります。

さらに、アナフィラキシー症状を引き起こす体内からの化学物質が出てくるのを抑える働きもあります。アナフィラキシーの症状を抑える効果がでるまでの時間も5分以内。アドレナリン筋肉注射は、即効性が強く早急にすべき対処法なのです。

ちなみに、「静脈注射したほうが効果は早いのでは?」と思う方もいるかもしれませんが、静脈注射した場合、不整脈や高血圧など有害な作用のほうが強く働くため、原則推奨されません。

② 抗ヒスタミン薬

抗ヒスタミン薬は、掻痒感などの皮膚や粘膜の症状や鼻や眼などの症状を緩和します。しかし、呼吸器症状は緩和しないので、アドレナリンが最優先です。効果までの時間も30分から3時間くらいで発現してきます。

③ 気管支拡張薬

交感神経のβ2受容体を刺激して、気管支を拡張する「気管支拡張薬」を吸入することがあります。15分以内に下気道の息切れや呼吸のしづらさを改善しますが、上気道閉塞や血圧低下を防ぐわけではないので、第一優先ではありません。

日本アレルギー学会 アナフィラキシーガイドラインより)

アナフィラキシーになったら、原因の除去はもちろんのこと、しばらく経過を見るために入院施設をさがしながら酸素投与を行い、必要があれば空気の通り道を確保が必要になります。

病院で注射された際、「息苦しさ」「ふらつき」「皮膚や粘膜の症状」「胃のむかつきが続く」などの症状が見られたら、繰り返しますが早めに医療スタッフにお声がけください。

家や職場でアナフィラキシーが起こった時の対応は?

① 救急車を呼ぶ

アナフィラキシーの経過は非常に早く、迅速なアドレナリン投与が生死を分かちます。まずは119番に連絡し、救急車を呼びましょう。

② 安静にする

まっすぐに寝かせましょう。吐いてしまったり意識がもうろうとしている場合は、気道を詰まらせてしまうことがあるので、横向き寝にしましょう。立ち上がったり歩き回らせないようにしてください。体位によって血圧が安定せず症状が悪化することがあります。

③ アナフィラキシーの原因をなるべく早く除去する

・ 皮膚や眼にはいった場合流水でしっかり洗いながしましょう。
・ 食べ物の場合: 口に残っていればなるべく除去しましょう。口をすすぐ際には誤嚥に注意してください。
・ 昆虫に刺された場合: 毒針にも毒液が残っているので取り除き、他のハチがいる場合は静かにその場から離れましょう。(マダニの場合は取り除かないほうがよいです)

④ アナフィラキシー補助治療剤の筋肉注射

アナフィラキシー補助治療剤(エピペン®)がもし手元にあれば、太ももの前外側になるべく早く注射してください。その際には、服の上から注射してかまいません。詳しくは、「エピペン®」のガイドブックを参照してください。(ガイドブックのURLはこちら

(参照:「オーストラリア 臨床免疫学・アレルギー協会」によるアナフィラキシーの応急処置

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【この記事を書いた人】 
一之江駅前ひまわり医院院長の伊藤大介と申します。プロフィールはこちらを参照してください。


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