切り傷の応急処置や病院に受診する目安は?早く治す方法やふさがる時間について解説

こんにちは、一之江駅前ひまわり医院院長の伊藤大介です。

日常生活で思わぬケガをすることもありますよね。自分や家族がケガをした時に処置の方法や病院に受診するタイミングなどを知っておくだけで、「万が一」の時に大きく影響します。

今回は、数あるケガの中で「切り傷」の応急処置の方法や、病院へ行く目安などについて解説していきます。

擦り傷(すり傷)については擦り傷を早く治すには?擦り傷で病院に行く目安や処置・薬についてを参照してください。

切り傷の応急処置は?

切り傷とは、包丁やナイフ・ガラスなどで切った直線的な傷のことを指します。さまざまなシチュエーションや方向で生じるので、多種多様な切り傷ができます。まずは傷口の種類によらない対応方法を教えます。

① よく傷口を洗い流し、異物を取り除く

汚染された状態で切り傷ができた場合、まずは慌てず流水で洗浄しましょう。消毒や軟膏を塗るよりも流水で洗い流すほうが、大きい異物も取れますし効果的です。

流水は、滅菌水は必要なく水道水で十分です。実際、両者に感染予防効果に差がなかったとする報告もあります。(参照:Am J Emerg Med.20: 469-72. 2002

もし出血がひどい場合には止血から行い、その後流水で優しく洗い流すようにしましょう。

② 止血する

出血している場合、止血を行います。応急処置で最も効果的な止血方法は直接圧迫止血です。清潔なガーゼやハンカチ・シーツ等を直接傷口に当てて手のひらで圧迫して止血しましょう。

止血する際のポイントは以下の通りです。

  • 出血している部分は心臓より高い位置にする: 血液は心臓が縮んで全身に運ばれます。高い所にするほど、重力に逆らうことになり、出血するスピードは遅くなります。
  • 出血している部分を正確におさえる:「なんとなくここら辺」と考えておさえてもとまりません。しっかり出血している部分をなるべく面積を狭くしておさえるようにしましょう。
  • おさえる部分は動かさない: 圧迫止血で止まるのは、血液中に含まれている「血小板」や「凝固因子」など出血を止める成分が働き、「かさぶた」が作られるから。おさえる部分がぶれていると、せっかく作った「かさぶた」が取れてしまいます。
  • 10分を目安におさえる:1分~2分くらいですぐ外して確認していませんか?正常な方でも「血小板」と「凝固因子」が働き、自然と固まるのには、2分~6分必要とされています。(出血時間についてはこちらも参照)血液を固まりにくくする薬を飲んでいる方はなおさらです。10分はじっと傷口を見たいのを我慢しておさえるようにしましょう。

落ち着いて上記をしっかり守れば、多くの場合止血されます。それでも出血がとまらない場合は、早めに病院に受診するようにしましょう。

なお、出血している部分でなく、その上流の部分をおさえることで止血する間接圧迫止血もあります。しかし、間違った手技で行うと、かえって時間のロスにつながります。

特に、一番カン違いしてしまうのが「輪ゴムで指の根本を圧迫する」などの方法です。多くの場合、血が心臓にかえる「静脈」だけふさぎ、肝心の動脈を圧迫できずにかえって傷口を悪化させてしまうケースが見られます。絶対に行わないようにしましょう。

③ 傷口を保護する

応急処置として傷口を保護します。安全な方法としては白色ワセリンや抗生剤の軟膏などで傷口を覆い、その後ラップや創傷被覆材(ガーゼやフィルムなど)で覆う方法です。

ステロイド軟膏のみの外用は傷口に対して逆効果なので行わないようにしましょう。(免疫を抑えてしまうので、特に汚染された傷口では悪化してしまいます。ステロイド軟膏は取り扱いに注意が必要です)

脱脂綿やティッシュは繊維が傷口に入ってしまうので保護には適していません。明らかに感染の可能性もなく、病院に受診するほどでもない浅い傷をのぞき、病院に受診するようにしましょう。病院に受診する具体的な目安は後述いたします。

切り傷で病院に受診する目安は?

では、切り傷はどれくらいで病院に受診すべきでしょうか。結論から言うと病院に受診する基準は「汚染され感染している傷の場合」「傷が深い場合」「異物の混入が考えられる場合」「傷がなかなか治らない場合」になります。

① 汚染されている傷・感染している場合

  • 痛みが強い
  • 傷口が熱をもって腫れている
  • 汚染された状況で傷ができた

こうした場合は、傷口が感染している可能性があります。抗生剤の内服や外用が必要なケースがほとんどなので、なるべく早く病院に受診してください。

特に汚染されている場合は、抗生剤加療に加えて破傷風トキソイドの接種が必要なことも。詳しくは怪我で破傷風ワクチン(トキソイド)を打つ場合は?効果や保険適応・投与間隔についても解説も参考にしてください。

② 傷口が深い場合

傷口が深い場合や、汚染されていなくても縫合処置をすることで傷口が早く治る可能性が高くなります。包丁で指をきったなど、縫合閉鎖が必要な場合には「皮膚科」「外科」「形成外科」を標榜しているクリニック・病院に受診するようにしましょう。

特に、きれいな切り傷の場合、受傷から6時間以内に洗浄、縫合すると、創部の感染を引き起こさず傷あとがきれいに治りやすいとされています。そのため、感染されていない傷でも早めの受診が大切です。

また、神経や腱(けん)・関節・内臓を損傷していると思われる場合は、クリニックでは対処できないことも多いので、画像診断ができる病院をオススメします。もちろん当ひまわり医院でも傷口を見極めて、場合により紹介させていただきます。

③ 異物の混入が考えられる場合

特にガラスでの切創の場合「一見異物が入ってないように見えて、実はガラスが入っていてなかなか治らない」ということをよく経験します。念入りに洗浄する必要があり、詳しく拡大鏡も用いながら取り除いていく必要があるので、病院に受診したほうがよいでしょう。

もちろん異物の混入が考えられる傷は汚染されていることも多く、その点からも病院に受診したほうが無難です。

④ 傷がなかなか治らない場合

通常、傷は修復過程に問題がない場合、1週間から最長2週間くらいで通常の皮膚になります。1週間で治ることがほとんどで、1週間たっても治らないのは何か修復過程に原因があるはずです。

  • 様子見てたけど、かえってジクジクしてきた
  • 傷口がだんだん白く汚い感じになってきている

こうした場合は、例えば死んでいる組織が蓋をして傷口の再生を邪魔していることもあります。適切な処置が必要なので、一度病院に受診するようにしましょう。

切り傷を早く治す方法やふさがる時間は?

切り傷を早く治すには、とにかく初期治療・初期対応が非常に重要。特に

  • 傷口の出血を早く止めること
  • 傷口の感染を防止すること
  • 傷口が再生する環境を整えてあげること

が大切ですね。環境を整えてあげるために「縫合処置」や「汚染された部分を取り除く処置」などが必要になってきます。創傷被覆材も適切に使うなら有効です。(逆に適切に使わずにかえって悪化してしまうケースもたびたび経験します)(参照:形成外科診療ガイドライン

前述したとおり、傷の修復過程に問題がない場合、健康な方で軽い切り傷でしたら、1週間~最長2週間くらいでふさがります。もしなかなか切り傷が治らない方、切り傷に関して心配な方は早めに「皮膚科」「外科」「形成外科」に受診するようにしましょう。

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【この記事を書いた人】 
一之江ひまわり医院院長の伊藤大介と申します。プロフィールはこちらを参照してください。

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