犬にかまれた時の応急処置と狂犬病ワクチンについて【費用・副反応】

みなさん、突然ですが犬にかまれた時の対処法を知っていますか?

2020年度のペットフード協会による調査によると、8世帯に1世帯は犬をペットとして飼っており、犬と遭遇する機会は珍しいものではなくなりました。

とっさの時に慌てないように、今回犬にかまれたときの対処法をまとめました。

犬にかまれた時の応急処置は?

犬にかまれた時の傷は「汚染された挫創(ざそう)」になります。この場合とにかく「感染させないこと」「出血をひどくしないこと」が大切です。

① 流水で洗い流す

傷口の深さにもよりますが、まずは水道水で構いませんので、5分以上患部を流水で洗い流すようにしましょう。滅菌された水でなくても感染予防効果は変わりません。

② 止血する

犬にかまれた場合、動脈などの大切な血管を傷つけていない限り、通常の圧迫止血で止まることが多いです。心臓の位置よりも高くし、正確に出血している部分をじっと圧迫するようにしましょう。目安としては10分程度です。

途中でこすったりすると、せっかく血が止まりかけた部分もはがれて再出血することがあります。

動脈出血は

  • ふき出すような出血の場合
  • 真っ赤な血が脈打つように出ている場合

などに疑います。その場合は強く圧迫しながらすぐ救急車を呼ぶようにしましょう。(非常に稀ですので安心してください)

③ 病院に受診する

落ち着いたタイミングで構いませんのでなるべく早く病院に受診するようにしましょう。前述の通り、犬にかまれた時の傷は「汚染された傷」になります。抗生剤加療やワクチン接種などが必要になるケースがほとんどになるので、必ず病院に受診しましょう。

犬にかまれたら何科に受診する?

犬にかまれたら「外科」や「皮膚科」がオススメになります。外傷の専門知識があり、外傷に対する処置ができる医師が上記を標榜している場合が多いからです。(もちろん救急外来・救急科も豊富にありますが、日中のクリニックで標榜しているケースは極めて少ないです)他には

  • 「破傷風ワクチン」が確保されている
  • 経歴で「総合診療科」や「救急科」「外科」「皮膚科」での診療経験がある

なども1つの目安になります。また骨にまで達しているほどの深い場合は、総合病院でないと対処できないことが多いので、救急外来に受診するようにしましょう。

もちろん当院も外傷の経験が豊富にありますので、ぜひ気軽にご相談ください。

犬にかまれた時「狂犬病ワクチン」を打つべきか

犬にかまれた時に真っ先に考えるのが「狂犬病」ですよね。犬にかまれた時に狂犬病ワクチンは打つべきなのでしょうか。

結論から言うと「海外(特に東南アジア)で哺乳動物(犬・猫・サル・コウモリ・フェレットなど)にかまれたり引っかかれた場合には狂犬病ワクチンを打つ必要がある」といえます。

日本国内では昭和31年(1956年)を最後に発生がありません。輸入感染症としては

  • 1970年にネパールからの帰国者1例
  • 2006年にフィリピンからの帰国者2例
  • 2020年にフィリピンからの帰国者1例(帰国後3か月後に発症)

が報告されています。世界の狂犬病の発生状況は以下の図の通りです(厚生労働省・WHOの資料による)

狂犬病の症状や特徴は?

狂犬病の症状や特徴を簡潔にまとめると以下の通りです。

  • 非常に長い潜伏期間で発症(通常1~3か月・最長8年後)する
  • 強い不安感・錯乱・水を見ると首(頚部)の筋肉がけいれんする(恐水症)・冷たい風でも同様にけいれんする(恐風症)・高熱・全身けいれんなどが起こり、呼吸器障害と共に死亡する
  • 有効な治療法がなく、発症するとほぼ100%の方が亡くなる
  • 感染疑いがある場合には、連続したワクチン接種をすることで発症を抑えることができる

そのため狂犬病ウイルスをもつ動物に接触した疑いがある場合には、迅速な対応が必要となります。また、かまれた程度により対策方法も以下の通りに決められています。

カテゴリー接触の状況対策
I動物に触れる・餌をやる・無傷の皮膚をなめられるワクチン接種必要なし
II出血のない小さな傷や擦り傷・むき出しの皮膚をかじられる創部洗浄と迅速なワクチン接種
III皮膚を貫通するかみ傷やひっかき傷・粘膜や傷のある皮膚をなめられることによる動物の唾液との接触・コウモリとの直接的な接触による深刻な暴露創部洗浄と迅速なワクチン接種
必要に応じて免疫グロブリンを推奨
WHOの提言による)

こうした経緯から特に東南アジアに行く場合には、渡航前に狂犬病ワクチンの接種すること(暴露前接種)をおすすめします。

狂犬病ワクチンの効果やスケジュールは?

文字通り「狂犬病」の発症予防をうつワクチンです。「組織培養不活化ワクチン」(1980年製造)「ラビピュール®」(2019年)がありますが、当院では「ラビピュール®」を採用しています。前者は投与完了まで3か月かかりますが、ラビピュール®の場合投与完了まで最短で済むのが特徴です。

犬にかまれる前なら「0日目・7日目・21日目(もしくは28日目)」の3回接種ですが、犬にかまれた後の場合には、下記スケジュールの4回~6回接種になります。

  • 4回接種なら0・7・21日目
  • 5回接種なら0・3・7・14・21日目
  • 6回接種なら0・3・7・14・30・90日目
ラビピュール®のワクチン接種を受ける人のガイドより転載)

WHOによると免疫グロブリンの投与ができない場合であっても、暴露後すぐに傷口を徹底して洗浄し、ワクチン接種を完了させることで95%以上の防御効果が得られます。(実際に狂犬病発生国で免疫グロブリンの治療を受けているのは1~10%と推定されています。) (WHOの提言による)

渡航前にワクチン接種を受けられたい場合は渡航前に3回接種することが推奨されています。ラビピュール®の場合、渡航1か月前から接種を開始する必要があるので、ご注意ください。(WHOでは最低2回接種をうけることが重要とされています)(詳細はこちら

狂犬病ワクチンの価格・費用は?

狂犬病ワクチン「ラビピュール®」の費用は以下の通りです。

狂犬病ワクチン「ラビピュー ル®」1回 15000円(診察料込)

明らかに「海外で犬にかまれた」「野生のコウモリの遭遇してかまれた」などの場合は保険適応となります。

狂犬病ワクチンを打ってはいけない方は?

次の方は狂犬病ワクチンを接種してはいけません。(ラビピュール®添付文書より)

  • 明らかに発熱している方
  • 急性疾患にかかっていることが明らかな方
  • ワクチンの成分によってアナフィラキシーになったことがある方
  • その他、予防接種を行うことが難しいと考えられる方

他に、鶏の卵や鶏肉・ゼラチン・テトラサイクリン・ネオマイシン・アムホテリシンBにアレルギーを起こしたことがある方も接種要注意になります(絶対に行ってはいけないというわけではありません)

狂犬病ワクチンの副反応は?

副反応として多いのは「局所の痛みや発疹」「頭痛」「倦怠感」です。いずれも10%以上で出てきます。他、蕁麻疹やかゆみ、吐き気、筋肉痛などがあります。

重篤な副作用としてはアナフィラキシーショック・脳炎・ギランバレー症候群(四肢の筋力が脱力します)などがありますが、非常に稀であると考えています。

犬にかまれた時に接種されることの多い破傷風ワクチンとは?

実際には、国内で犬にかまれた場合狂犬病を接種することはほとんどなく、実際に接種されることの多いのが「破傷風ワクチン」です。

破傷風菌とは土壌に広く分布する菌の1種で、酸素が触れない傷口で増殖し毒素を産生します。。この毒素により、けいれんやひきつけなどの神経症状が起こり、全身性破傷風に至ると大人でも10~20%という高い致死率になります。

こういった経緯から、破傷風は注意しなければならない感染症の1つであり、汚染されている傷の場合は接種をオススメしています。犬にかまれた場合は、数百円から接種することができ、もちろん保険適応です。

長期間免疫能を持たせる場合は3回接種、そうでなければ2回接種になります(保険適応は2回まで、3回目は当院では5000円[自費]になります)

詳しくは、怪我で破傷風ワクチン(トキソイド)を打つ場合は?でも記載しておりますので、参考にしてください。

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【この記事を書いた人】 
一之江ひまわり医院院長の伊藤大介と申します。プロフィールはこちらを参照してください。

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